師走− 結晶たち worst song by ideo

師走− 結晶たち worst song

年の瀬になるとサブカルチャー等のジャンル毎に「今年のベスト」的な記事がネット上に流れ出す。言ってみれば現代の風物詩なのであるが、どうもそれらが苦手だと感じる。その理由は、自分が作るものがそこに選定されないという卑小・矮小な自意識の部分もありながら、どうもそれだけではない。ネット以前の時代から、TVや雑誌等マスメディアでは連綿と続いていた行為ではある。今週のベスト10云々。または音楽雑誌や映画雑誌の今年のベスト50云々。そこにおいてはジャンルの評論や批評軸における書き手の目利きと経済的・広告的な消費文化の論理や意味が共存していた。売り上げが売り上げを更に産むヒット・チャートの論理。現代の例えばSNSにおける個々人によるベスト選定にはそんな昭和や平成初期よりは広告的・メディア資本的な論理は一見少ない。勿論、人には好みがあり、それを伝えること自体にも何も問題はない。私も普段しばしば目利き的な方のコンテンツの紹介を参考にさせて貰う。またヒットチャートに入る楽曲でお気に入りのものも多い。一方で、アルゴリズム広告のシステムではどこまでネット上で注目されているのかが、データとして把握され、個々の事象やハブとなるインフルエンサーのインプレッションがより広範な範囲への情報の拡散に繋がる。マーケティング、ビジネス、グローバル化、反多様性。少し前の私のオススメTLは、某有名ミュージシャンの来日をスマフォで撮影した動画ばかり流れて、それに続いて再結成したビッグなバンドの来年の来日の話題が埋めた。TLのエコチェンを察知し、よりスパイラルを高めるアルゴ。同調効果、バンドワゴン効果、他者の欲望、社会的選考。同様に、現代において、個々人が何かを価値が高いと「格付け」することもインフルエンサーの論理としては極めて広告的であり、巨大資本の論理と実は遠からず近しい。無論、ネットで鍵もかけずに何か表現を努めて小規模にでも広報すること自体がこの論理の只中に存在していることもまた間違いない。同時にこの己の行為を自覚しながらも、遠くの彼方の大都市の瞬くネオンを遠巻きに眺めながら(CUCURUSS＝Cuculus canorus＝カッコウ＝閑古鳥からのリリースにも関わらず！！)、ブツブツと異論を唱え、闇夜の夜道をトボトボと歩んでいる乖離的な感覚には一応はなる。12月に入るとサッサと「今年のベスト」がまた続々と発表されていく。広告不足や実力不足や認知度や人気度や音楽としての評価や承認欲求やビジネスや売り上げやコネややっている音楽への理解度の低さ手前の体感０度やカセットデッキ持ってないでしょ以前に、年末年始の押し迫ったこの日付けにネットの渦にリリースしたこの作品は、物理的・時間的・空間的なその意味で全く先ず選定の対象にすらならないだろう。当然である。太陽にくらべてすべては儚い瞬き。みんな違ってみんなよい。でも、暖かで騒々しいデニーズでかかる誰も聴いていないパーシー・フェイス楽団(『アフターダーク』における村上的後期資本主義社会の描写)が奏でる静かな夜 (silent night) のクラシックな録音の音は私も好きだ。現代では最早誰も聴取してはいない店内BGMやエスカレーター・ミュージックやミューザックからは誰も言わないけれど其れ等を批判したイーノに先駆けた流れを遡行出来るのかも知れない。その違いはファミレスやスーパーか空港か私達の部屋の違いだけだろう(尤もフェイスが作曲や録音時にそこまで意識していたかは一考の余地はあるが)。聖なる夜 (holly night) にシンシンと降り積もる結晶たち。安らかに眠る子どもたちの枕元に届く約束のプレゼント。サンタさんとトナカイさんおつかれ。彼らが空の上から見た地球は青みががって白みががって茶色がかって丸かった。この薄皮よりミクロな闇空の下で、酸素と水と土と細胞壁は浸透し合い、マクロからみれば原子のような身体を通して繋がっている。論理の筋道が初めから違うのだ。けれど、君も僕もその中では一緒。人類補完計画。いずれデータとしても交雑してイン・ザ・ミソ・スープ。溶け合いながら土の染みとなる。音がどこかで鳴った。空気と身体を震わせてまた消える。あの木が倒れた音を誰が聴いたか。もう直ぐ今年も終わる。お世話になりました。さよなら人類またいつか。僕もあの何処かの木のように静かに倒れる。紅白と同じ日の再生。あなたの最高と私の最低が交じり合う。いつしかその歌の赤白い吐息が冷たい部屋の空間を振動させ谺し結晶化し床の上に降り積もりやがて朝が来て太陽の光によって溶けていき染みになり明日はリバース・デー。

最後迄お読み頂き誠に有り難う御座います。
今回のカセットテープ、オススメです。

良いお年を！！Peace ✌️❣️

Tracklist

1.	結晶たち worst song (R)	8:52

2.	結晶たち worst song (L)	6:45

3.	結晶たち worst song (L+R)	6:34

Credits

released December 30, 2024

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